近赤外線放射能力が高い。

赤外線は前掲のとおり、遠赤外と近赤外に分けられるのが一般的ですが、最近は研究が進展し、近赤外、中赤外、遠赤外に分類されるようになりました。この内、近赤外線と呼ばれる波長は、約700~2500ナノメートル(0.7~2.5マイクロメートル)になります。

近赤外線は、赤外線カメラ、家電用リモコン、果物の糖度測定などに使われるおなじみの光です。人体への透過力は、遠赤外線が皮膚表面から約0.2㎜の表面で、ほとんど吸収されるのに対して、近赤外線は皮膚表面から数㎜の深さまで浸透します。この特長を使い、指や手のひら内部の静脈模様を近赤外線で調べることで個人を認証する方法が実用化されています。

近赤外線の人体に対する作用としては、真皮や皮下組織の中まで浸透することで、熱作用や血管拡張作用があります。有効利用の代表的なものは、しわ・たるみの改善効果があげられ、真皮を加熱することで、皮膚を即時に引き締めることができ、コラーゲンの再合成を高めるためとされています。また、近赤外線はがんの光免疫療法に使用されており、世界の注目を集めています。「近赤外光線免疫治療法」と言います。この治療法は、がん細胞だけに特異的に結合する抗体を利用します。その抗体に、近赤外線によって化学反応を起こす物質(IR700:波長700nm(0.7㎛)の近赤外線エネルギーを吸収する性質を持つ)を付け、静脈注射で体内に入れます。抗体はがん細胞に届いて結合するので、そこに近赤外線の光を照射すると、化学反応を起こしてがん細胞を破壊します。

次の図は、貴陽石の0.7~2.5マイクロメートルの近赤外線放射率データですが、貴陽石は理想黒体にほぼ近い放射率を示し、近赤外線放射率も高い鉱石です。

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