採掘と、渡る風のささやかな音だけが聞こえる御座入鉱山。晴れた日には霊山・武尊山と、その南側に馬蹄形に広がる平野を望む、すがすがしい景色が広がります。この平野は、その昔、日本武尊(ヤマトタケルノミコト)が東征の際に通り、武尊山へ入った跡だという言い伝えがあります。

鉱山として切り開く前、ここには奥山から動物たちが出てきては、日がな一日日向ぼっこをしてまた奥山へ帰るという姿が、しばしば見られたそうです。民家が近く猟師に狙われやすい、鷹や鷲、とんびなどの猛禽類に襲われてもおかしくない開けた見晴らしの良い場所なのに、なぜか動物たちはみな危険を顧みずそのからだを横たえる、不思議な場所でした。今でも砕石作業のない日には出てきている気配があります。

最近になって、その理由がやっとわかってきました。この場所で採れる岩の成分や、岩から発せられる様々なエネルギーを科学的に検証したからです。どうやら動物たちはこの地から放出される遠赤外線や近赤外線、マイナスイオンなどのエネルギーを享受し、からだを癒していたようなのです。

昔むかし、動物たちが見つけたパワースポット。彼らはこの場所が持つエネルギーや力を、自然と備わっているその能力でちゃんとわかっていたのです。だから、猟師や鷹やとんびなどに狙われる危険を冒してでも、この場所にからだを癒しにきたのです。

そんな古の物語が残るこの山を、いかに守り、活かし、次世代へと引き渡すか。日々自然と対峙し、自然の恵みに感謝しながら、今日もまた、鉱石に魂を入れる作業に明け暮れ、唯一無二のものを模索しています。

コラム「十二様」

御座入鉱山の中腹に小さな祠があります。「一年に12人の子どもを産む」との言い伝えがある山の女神様「十二様(じゅうにさま)」を祀る祠です。

生命力あふれる春の芽吹き、動植物が成長する深緑の夏、豊かな実りをもたらす紅葉の秋、白銀の雪に閉ざされる静かで神秘的な冬。山は一年を通して四季折々の素晴らしい恵みを与えてくれるありがたい存在です。もちろん鉱石もその恵みの一つです。十二様の12人の子どもとは、そういう山の恵みのことをさすのでしょう。

十二様を厚く信仰する山の関係者は、毎月12日に「十二祭」を行います。御馳走とお酒を十二様にふるまい、山の安全を祈り、感謝を捧げるのです。女神様が宿り、女神様に守られる御座入鉱山。もしも、十二様のお使いであるオコジョに山で出会えたときは、十二様があなたに会いにきてくれたのだと思ってくださいね。

御座入鉱山の鉱石(製品グレード)

鉱石の種類と成分

成分(%) / 製品 長石 陶石
特級品 中級品 下級品 白色系 淡褐色系
SiO2 66.04 72.83 75.76 77.95 77.74
Al2O3 19.05 16.00 13.70 13.50 13.30
Fe2O3 0.29 0.55 0.65 0.35 0.65
TiO2 0.03 0.03 0.03 0.04 0.03
CaO 0.52 0.35 0.35 0.40 0.45
MgO 0.10 0.03 0.03 0.03 0.04
K2O 6.41 4.80 4.80 4.07 4.04
Na2O 6.46 4.08 4.08 2.74 2.77
lgloss 0.65 0.60 0.60 0.92 0.98

陶石白色系を325mesh(-45μm相当)に粉砕したときの試験結果の一例

白色度 80.0度
フルイ残分 +45μm 0.216%
+75μm 0.002%
水分 0.69%
見かけ密度 0.55g/ml
吸油量 25cc

*pH 6.5(中性)

鉱石の用途

  • 硝子短繊維及び板硝子用
  • 窯業原料用・釉薬
  • セラミックス原料
  • 白色フィラー用(塗料・製紙・ゴム・ガスケット等)
  • 化粧品原料
  • 建材の原料(ドライモルタル等)
  • 農薬・肥料のキャリア材
  • 濾過砂
  • 土壌改良剤
  • インターロッキングの表層砂
  • 化粧ブロックの原料

*その他、さまざまな分野に粒度、色、成分等を調整して出荷しております。